北海道公立高校入試(国語・2021年度)の分析
2021年度の北海道公立高校入試(国語)について、概観と分析を行います。
なおこの記事は、受験を志す生徒のみなさんに向けたものではなく、国語教材制作者および指導者へ向けたものです。
2021年度 北海道公立高校入試
2021年度の北海道の公立高校一般入試は、2021年3月4日に実施されました。
問題と解答は、北海道新聞のwebページに掲載されています。
https://www.hokkaido-np.co.jp/koukoujuken/2021
ここでは、国語の問題について分析します。
大問構成
1 漢字・言語事項・短い説明文の読解
2 漢字・熟語・話し合い
3 小説の読解
(学校裁量問題)説明文の読解
4 古文の読解
4大問構成です。
北海道では、2009年から、各学校の特色を生かした選抜ができるように、国語・数学・英語の問題の一部を、「思考力・応用力」を重視した難易度の高い問題にすることができるようになっています。
これが学校裁量問題で、2021年度は、大問3で設定されています。
この学校裁量問題は、設定されるのは2021年度が最後で、2022年からは廃止されることになっています。
https://kachimai.jp/article/index.php?no=479068
(十勝毎日新聞電子版)
各大問の分析
大問1 漢字・言語事項・短い説明文の読解
・漢字は読み4問、書き4問です。音訓各2問ずつで、小学校学習漢字を中心に基本的な問題になっています。「書き」は、すべて小学校の学習漢字です。
・敬語の、例文の空欄補充の問題が出題されました。「待つことを求める文になるように」と提示されているので、「待つ」を「お…する」の形の尊敬語に直す問題です。
・楷書と行書、筆順、部首の知識を組み合わせた問題が出題されました。
・短い説明文の読解問題が出題されました。関口雄祐『眠れる美しい生き物』からの出題で、書き抜きのみで2問です。言語事項の大問に、短い説明的文章の問題を組み合わせるのは珍しく、北海道の特徴的な問題と言えます。
大問2 漢字・熟語・話し合い
・問一、二は熟語の構成、漢字の誤りについての小問です。
・生徒会役員会議で、役員に対して提案した資料と、その話し合いを読んで答える問題です。資料の読み取りと発言の趣旨をとらえさせる問題になっています。なお、「話し合い」の場面の設定ではありますが、発言者は提案者である岩崎さんのみで、対話形式の設問にはなっていません。
大問3 小説の読解
・川上健一『雨鱒の川』からの出題です。『雨鱒の川』は1990年刊行、2004年には玉木宏、綾瀬はるかの主演で映画化されました。
・小問4問の出題で、うち2問は、心情・表現の工夫をまとめた文章に書き抜きで空欄補充させるものです。
・心平と雨鱒についての描写を表形式でまとめた問題が出題されています。
・心平の心情を、70字以内でまとめる記述式問題が出題されています。
大問3(学校裁量問題)
・辻惟雄『伊藤若冲』からの出題です。2020年にちくまプリマー新書で発刊されました。辻惟雄は中世絵画の専門家で、若冲に関する著作が複数あります。
・問一で、改めて漢字の読み書きが出題されています。書きは小学校の学習漢字です。
・文章の内容をまとめた文の空欄補充が2題出題されてます。
・段落と段落の関係を選択肢から選ばせる問題が出題されています。
・筆者の主張を105字程度でまとめさせる記述式問題が出題されてます。105字は中途半端な字数で、字数設定として多くある出題ではありません。
大問4 古文の読解
・『十訓抄』より「博雅三位」の出題です。これまでに多数出題されてきた文章です。
・主語・動作の選択問題、物語の展開を並べかえさせる問題で、平易な問題です。話の筋が理解できているかどうかを問う問題になっています。